室内でも注意が必要! 高齢者の熱中症

いよいよ夏も真っ盛り、皆さまいかがお過ごしですか?
真夏日や猛暑日が続くこの時期になると、毎日のように目にするニュースがありますよね。
「野球の試合中、中学生数人が倒れて救急搬送」
「お年寄りが自宅で気分が悪くなり、家族が駆けつけた時には意識不明の重体」
そう、炎天下だけでなく室内でも油断できない、真夏につきもののやっかいな症状、熱中症。
熱中症というと、子どもの運動会や屋外スポーツの場で起こるイメージですが、実は一番多いのは高齢者だということをご存じでしたか?
適切な対処をしなければ、命にかかわることもある熱中症。
そこで今回は、高齢者の熱中症の原因から、知っておきたい応急処置、そしてシーン別の予防策について、詳しくお伝えしていきたいと思います。

高齢者はなぜ熱中症になりやすい?

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2013年の6月から9月の間に熱中症で救急搬送されたのは、全国で58000人超。そのうち65歳以上の高齢者が約半数を占めています。
「炎天下で汗だくで運動し、倒れる」という熱中症のイメージとはほど遠い高齢者の発症が、なぜこんなに多いのでしょうか。その理由をみていきましょう。

①脱水症状を起こしやすい

成人の場合、体内の水分量は約60%。それに対し、高齢者は50%強といわれています。
また、のどの渇きを感じにくくなるため、水分補給を怠ったり、頻尿が心配で水分をとらなかったりと、高齢者には脱水になりやすい傾向がみられます。

②暑さに対する調節機能の低下

体温の調節機能が低下するのも、高齢者の特徴。皮膚表面の熱を発散したり、汗をかいたりといった働きが衰えるため、体温を下げることができず、体内に熱がこもりやすくなります。室内でじっとしていても熱中症になるのは、このため。

③ 暑さを感じにくくなる

真夏でも長袖を着たり、重ね着をしている高齢者をよく見ますね。
高齢になると、暑さや寒さの感覚が鈍くなります。そのため体が発しているSOSに気づきにくく、熱中症のリスクも高くなるのです。

④持病のある人が多い

高齢者は糖尿病や腎臓病など、病気を抱えている場合が多く、体力も落ちているため、熱中症になると一気に重症化することがあります。
また、具合が悪くても持病のせいと勘違いし、適切な対処をせずに症状が進んでしまう危険も。

⑤思い込みが強く、無理をしがち

「夏は暑いもの。このくらいどうってことはない」
「周りに迷惑をかけるのが嫌」
そんな思い込みの強さや遠慮から、つい無理をして我慢してしまい、気づいたときには熱中症で倒れていた、ということも。年々、夏の暑さは厳しくなっています。昔と同じ過ごし方では乗り切れないことを理解してもらうことが大切です。

こんなサインに注意! 熱中症の症状

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では次に、熱中症によくみられる6つのサインをあげてみましょう。
このような症状が見られたら、熱中症を疑い、迅速に対処する必要があります。

<サイン1> めまい、顔のほてり

めまいや立ちくらみでふらついている、顔が赤くほてっているなどは熱中症によくみられる症状。本人は気づいていないことも多いので、注意して観察しましょう。

<サイン2> 大量の発汗、またはまったく汗をかかない

服がびっしょり濡れるほどの汗や、拭いても拭いても流れる汗、逆に暑いところでまったく汗をかいていないなど、発汗がおかしいときは、熱中症の危険があります。

<サイン3> 高体温、皮膚の異常

急に体温が高くなる、体の表面が熱を帯びている、皮膚が赤く、カサカサしているなども、熱中症を疑うサインです。

<サイン4> 筋肉のけいれん、筋肉痛

手足の筋肉がピクピクとけいれんしたり、固く張ったりすることがあります。また、いわゆるこむら返りと呼ばれる、筋肉がつって痛みが出る症状もみられます。

<サイン5> 体がだるい、吐き気がある

ぐったりして体に力が入らないような状態、また頭痛や吐き気、嘔吐があるときは要注意です。

<サイン6> 呼びかけに反応しない

意識が遠くなり、呼びかけに反応しなかったり、体がガクガク震えたりひきつけを起こすなど、全身状態に異常があるときは重症です。すぐに医療機関へ。

施設でできる応急処置とは

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次に、熱中症のサインに気づいたときにまず行うべき、応急処置について説明します。
高齢者の症状は重症化しがちなので、油断は禁物。
医療機関への受診を念頭において、応急処置を行いましょう。

●涼しい場所に移動する●

何よりも先に、少しでも涼しい場所へ移動することが大切です。クーラーの効いた室内や車内で休ませましょう。外出中で、近くにそのような場所がなければ、日陰で風通しの良い場所に移動し、安静にします。

●衣服をゆるめ、体温を下げる●

脱げる衣服は脱ぎ、体にこもった熱を放出させます。氷枕や保冷材があれば、首の両側・わきの下・足の付け根に当てて冷やします。冷たいものがなければ、皮膚に水をかけてあおぐことで、体を冷やすことができます。

●水分・塩分を補給する●

できるだけ水分をとらせます。水やお茶でもいいのですが、スポーツ飲料のように、同時に塩分も補給できるものがベスト。意識がなかったり嘔吐があるときには、誤嚥する危険があるので無理に飲ませず、一刻も早く病院に搬送を。

どうすれば防げる? シーン別・熱中症予防対策

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それでは高齢者の熱中症を防ぐための対策を、シーン別に見ていきたいと思います。
屋内、屋外、入浴時、睡眠時と、それぞれに注意することで、熱中症のリスクを効果的に減らしましょう。

< 熱中症を防ぐ・・・室内では? >

⇒ 部屋の温度を測りましょう

高齢者は、加齢により、室温の変化にも気づきにくくなっています。部屋の目立つところに温度計を置き、本人や介護者が目で確認できるようにします。

⇒ エアコンを上手く使って暑さを和らげましょう

高齢者でエアコンが苦手な人は、冷たい風が直接体に当たるのを不快に思うことが多いようです。風向を天井付近に向けると、冷やされた空気が下に降りてくるので、快適に部屋全体を冷やせます。ただし設定室温を下げ過ぎると、外気温との差が大きくなり、体に負担がかかることもあるので注意。

⇒ カーテンやすだれで日差しをさえぎりましょう

部屋に直射日光が入ると熱をためこんでしまいます。窓を開けて風を入れるときも、カーテンやすだれはおろして、太陽の光を入れないようにします。

⇒ 涼しくてゆったりした衣服を身につけましょう

綿・麻など自然素材や、吸汗速乾素材など、清涼感のある衣類がおすすめ。風が通るようにややゆったりめのサイズを選ぶと良いです。

⇒ 一日に一回は外の空気に触れましょう

暑いからと一日中部屋にこもっているのもあまり健康的ではありません。一日一回庭を散歩するだけでも、体が暑さに慣れ、汗をかく量も増えていきます。外出が難しければ、室内で少し汗ばむくらいの軽い体操をするだけでも効果はあります。

< 熱中症を防ぐ・・・屋外では? >

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⇒ 環境省の「熱中症予防情報」を参考にしましょう

高齢者は、加齢により、室温の変化にも気づきにくくなっています。部屋の目立つところに温度計を置き、本人や介護者が目で確認できるようにします。

⇒ エアコンを上手く使って暑さを和らげましょう

サイトに掲載される暑さ指数(WBGT)を調べ、「ほぼ安全」ならOK。「注意」レベル以上なら、高齢者の外出は控えたほうが賢明です。

⇒ 日傘や帽子を使用しましょう

戸外ではなるべく日陰を歩き、さらに日傘や帽子でガードするのも忘れずに。

⇒ こまめに水分補給をしましょう

飲み物は必ず持ち歩き、こまめに給水タイムをとって。
少しずつでも水分を補給することが熱中症予防の基本です。

⇒ 涼しい場所をチェックしておきましょう

店や施設など、涼める場所を前もって調べ、一休みしたり、いざというときに利用できるようにしておきます。

< 熱中症を防ぐ・・・入浴時には?>

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⇒ 湯温は40度以下にしましょう

湯船につかるなら、熱いお湯や長湯は厳禁。ぬるめのお風呂にさっと入るだけでも、リラックス効果は十分です。

⇒ 水分補給をしましょう

入浴すると体内の水分が奪われます。入る前と、出た後に、必ず水分をとるのを忘れずに。

⇒ 暑がるときはシャワーや清拭にしましょう

高齢者が暑いからと湯船に入るのを嫌がったら、ぬるめのシャワーや、冷たいタオルで体を拭いてあげて。さっぱりする上に気化熱の効果で体温が下がり、涼しくなります。

< 熱中症を防ぐ・・・睡眠時には? >

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⇒ 寝る前に水分を補給しましょう

人は寝ている間に汗をかき、水分が失われます。夜間のトイレに起きるのが嫌で水分を控える高齢者が多いのですが、熱中症が心配なこの時期には、寝る前の給水が大切です。

⇒ 枕元に飲み物を置いておきましょう

夏は、夜中にのどの渇きで目が覚めることが多いもの。すぐに飲めるように、手の届く場所にペットボトルや水筒を置いておきます。

⇒ エアコンを上手く使いましょう

入眠時や明け方の気温が上がってくる時間には、エアコンを活用して。
タイマー機能を上手く使うと、熱帯夜も快適に過ごせます。

⇒ 寝具やパジャマは涼しいものを選びましょう

寝具に熱がこもり、寝苦しい夜が続くと、体力も低下し、熱中症のリスクが高まります。接触冷感の素材など、夏向けの寝具やパジャマを選ぶようにします。

熱中症予備軍、「かくれ脱水」に注意!

高齢者は熱中症になると重症化しやすいため、その前段階で気づくことが大切になってきます。
最後に、本格的な脱水症状を起こす前の「かくれ脱水」を見抜くめやすを知っておきましょう。
この段階で見つけて対処すれば、熱中症の原因のひとつである、脱水症状を防げます。ぜひ参考にしてください。

【かくれ脱水のサイン】
●手の甲をつまんで放したあとが「富士山」のようになって戻らない
●爪を押して、白からピンク色になるまで3秒以上かかる
●口の中が乾燥している
●舌が白い苔でおおわれている、または舌の赤みが強い
●舌の表面にひび割れがある
●皮膚がカサカサして張りがない
●手足が冷たい

終わりに

高齢者の熱中症について、さまざまな角度から見てきました。
熱中症は、真夏の高温多湿な環境に、人の体が適応できずに起こってくるもの。
とくにここ数年の記録的な猛暑には、高齢者だけでなく健康な成人や子どもの体も悲鳴をあげています。介護スタッフは、入居者様が夏を快適に乗り切れるよう気を配るとともに、自身の体調にも留意し、「ただの夏バテだから」と甘く見ないように注意する必要があります。
前述したように、熱中症はときには命を奪うこともある危険な症状。けれど、正しい知識を持ち、効果的な予防と適切な対処ができれば、決して怖いものではありません。
入居者様が健康な夏を過ごすために、ぜひ今回の記事を参考にしていただければ幸いです。

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