高齢になると増える睡眠障害とは?

高齢者の睡眠リズムは若い人とは変わってきます。

「ベッドの中でいつまでも寝付けずゴロゴロ・・・」
「夜中に何度も目がさめる」
「深夜にやっと眠れたのに、早朝に起きてしまう」

そんな悩みを抱える高齢者は多いもの。
さらに、病気による痛みや薬の影響など、さまざまな要因が、高齢者の眠りの質に関わってきます。
今回は、そんな高齢者の睡眠障害の原因や、心身に及ぼす影響を知り、その予防と対処について学んでいきたいと思います。

高齢者の不眠の原因とは

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「眠れない」と一口にいっても、その原因はさまざま。
主なものをあげてみましょう。

① 加齢による体内リズムの変化

年齢を重ねると、体内の生理機能が低下してきます。また、日中の活動も減っていくため、体が必要とする睡眠時間は短くなり、さらに睡眠そのものが浅くなります。
たとえば夜10時に寝て、翌朝は4時に目がさめたとしても、6時間眠ったことになり、高齢者の睡眠時間としては十分。日本人の平均睡眠時間は7時間で、高齢者の場合はそれより短いのが普通です。

② 頻繁にトイレに行きたくなる

加齢により、腎臓機能が落ち、尿の量が増えます。また膀胱の容量の低下や、筋力のおとろえなどから、頻尿や尿漏れを起こす高齢者も多く、夜中に何度も尿意を感じて目が覚め、安眠をさまたげる原因となります。

③ 痛みや不快感などの症状

高齢者は複数の持病を抱えていることも多く、その症状が眠りの質を低下させることもよくみられます。肩や腰の痛み、胃腸の不快感、高血圧など、症状が多いほど、睡眠障害を起こす割合も増加。体が痛くて寝返りが打てず、眠れないというケースも多いようです。

④ 服用している薬の影響

多くの高齢者が数種類の薬を服用しているため、その影響で不眠が引き起こされることも。薬が原因とみられる場合、処方した医師と相談して対応する必要があります。

慢性的な睡眠不足がもたらす影響

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高齢者の不眠は、長く続くと心身にさまざまな影響を及ぼすため、注意が必要です。
抵抗力が落ちて風邪をひきやすくなったり、持病に悪影響を及ぼす場合も。
以下のような症状が見られたら、医師に相談して早めに対処しましょう。

●血圧が上がる
●血糖値が上がる
●免疫力の低下
●生活習慣病や心臓病のリスクが高まる
●食欲が異常に亢進する
●集中力や判断力の低下
●抑うつ症状

睡眠障害を予防するポイント6

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それでは、不眠を慢性化させないためにはどんなことに注意すればよいでしょうか。
大切な6つのポイントをまとめてみました。

1) 眠る時間にこだわりすぎない

「〇時には寝なければ」と意気込みすぎると、頭がさえてかえって眠れなくなります。
「眠くなってから床に入ればいい」と割り切り、寝る時間や睡眠時間にはこだわらないこと。
眠れなければベッドを出て温かい飲み物を飲むなど、リラックスするのも有効。

2) 早寝早起きではなく、「早起き早寝」

 早く寝て早く起きることを意識しすぎると寝付けないもの。
寝る時間はあまり気にせず、起きる時間は毎日同じ時刻に決めましょう。毎朝規則正しく早く起きることが、早寝につながります。

3) 寝る前には刺激物を避けてリラックス

眠る4時間前からは、コーヒー、紅茶、緑茶などのカフェインをとらないこと。
ぬるめのお湯の入浴や、気分を落ち着かせる音楽を聴く、あたたかいミルクを飲んでリラックスするなどの「入眠儀式」があると、身体がスムーズに眠りへと入っていけるようになります。

4) 光を利用して身体のスイッチをON/OFF

朝、目が覚めたら太陽の光を浴びると身体のスイッチが入ります。起きたらすぐカーテンを開け、日光を取り入れましょう。逆に夜は、照明は落として。真っ暗よりも、ぼんやりとした間接照明が安眠には効果的です。足元にフットライトを置くのもおすすめ。

5) 昼寝は午後の早い時間に

昼間、うとうとしてしまう高齢者は多いもの。そんなときはベッドに入って昼寝もOK。ただし長時間寝てしまうと深い睡眠に入ってしまうため、20~30分にとどめるようにします。
また、夕方以降の昼寝は夜の不眠につながるので、寝るなら15時前までにしておきましょう。

6) 規則正しい生活リズムが大切

朝食はしっかりとり、心と身体を目覚めさせます。眠る前の夜食は消化のよいものをごく軽く。散歩や体操などの運動は、午後から夕方がベスト。この時間帯に規則的に体を動かす習慣をつけると、夜には心地よい眠気を感じられるように。

認知症で睡眠障害のある高齢者には

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認知症のある人は健康な人に比べてさらに睡眠が浅くなり、重度の認知症患者では、一時間程度の睡眠も続けてとれなくなるといわれています。
また、日中にうとうとする時間が多いため、昼夜逆転になりがちです。中には、夕方から夜にかけて徘徊や興奮、奇声などの異常行動がみられる場合も。日没症候群と呼ばれるこの症状も、睡眠と覚醒のリズムが狂うことから生じるといわれています。
認知症の睡眠障害に有効な薬はなく、たとえ効果があっても一時的です。眠れないからと薬を与えすぎると、日中にせん妄状態になったり、誤嚥や転倒などを招きやすくなり、かえって介護の負担が大きくなります。
認知症患者の不眠に対しては、前述した6つのポイントのほかに、患者の身体の痛みなどの症状を把握し、十分に対処することと、認知症の治療薬(コリンエステラーゼ阻害剤)を午後以降に服用しないことを留意しましょう。
昼夜逆転で夜通し起きていたり、大声で介護スタッフを呼ぶなど、夜間のケアも大変になりますが、できるだけ本人の気持ちに寄り添って関わりたいもの。暗闇が怖いなら明かりをつけたままにしたり、一人で寂しいと訴えるなら一緒に横になる、外に出たいといわれたら庭を散歩するなど、本人の言い分を頭から否定せずに穏やかに受け入れることも大切です。

まとめ

高齢になると多くの人が、退職や家族との死別、一人暮らしのストレスなどに加え、活動量が低下しメリハリのない日々を送りがちになることや、心身の病気などによってさまざまな睡眠障害を起こしやすくなります。
介護施設の入居者の場合、規則正しい生活リズムと、親しい人やスタッフとの豊かなコミュニケーション、趣味やレクリエーションなどを楽しむ生き生きとした暮らしが、健やかな安眠へとつながります。
眠るための工夫だけでなく、日中の活動の心地よい疲れで、スムーズに眠りについてもらえるよう、起きている時間を充実させていくことも大切といえるでしょう。

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