都市圏の介護施設不足、地方の人口減少を「介護移住」で解決!?

都市圏の高齢者、地方介護移住のススメ

東京都、神奈川、千葉、埼玉県の首都圏1都3県。
先日、この首都圏に住む高齢者に地方移住をすすめる「首都圏高齢化危機回避戦略」が発表され、大きな話題を呼んでいます。

これを発表したのは民間研究組織・日本創世会議。昨年「消滅可能性都市」の存在を世間に広く知らしめた組織の提言なだけに、無視はできません。実際に、すでに都市圏の高齢者の間では、地方へ介護移住する動きも出始めています。

果たしてこれが「首都圏高齢者の追い出し」にあたるのかどうか、賛成派・反対派の両方の意見を見てみましょう。

「追い出し作戦」の背景にある地方・都市圏それぞれの事情とは?

これからの日本では、高齢化率は全都道府県で軒並み上昇。
ただし「高齢者人口」だけを見てみると、現在過疎化が進んでいる秋田県などの地方部では、今後10年で減少または頭打ちになるようです。
一方、高度経済成長期に一気に人口がなだれ込んだ都市圏。こちらでは高齢化率と共に高齢者人口も増加します。特に東京圏では今後10年で高齢者人口が175万人増加。介護サービスの利用者も現在より45%も増加することになります。

ですが地価も人件費も高い東京圏では、需要に見合うだけの介護サービスを供給できる見込みはありません。すでに今の時点で、東京都の特別養護老人ホーム待機者数は全国トップです。

 そこで持ち上がったのが、地方への介護移住をすすめる今回の話。高齢者人口が減った地方なら、たしかに都市圏よりは介護サービス供給に余裕がありそうです。 

賛成派の主張

移住する高齢者、受け入れる地方部、両方にメリットがあるということですね。
また、「地方部」といっても、今回移住に適した地域と示された都市の半分は県庁所在地。賑やかな東京圏からいきなり過疎地に移住をすすめているわけではありません。高齢者の方は急激な環境変化によるストレスや体調の悪化が心配されますが、このあたりも考慮されているようです。

そして介護移住者を受け入れる地方部。受け入れ態勢に余裕があるとはいえ、それは介護施設や病床数などのハード面の話。利用者が増えるとなれば、当然スタッフも増やす必要がありますから、新たな雇用を生みだすのは間違いありません。

反対派の主張

「介護を質ではなく量でとらえている。また、国が目指す「地域包括ケアシステム」の流れに逆行するものだ」

高齢者人口が減る地方部では、たしかに施設数や病床数に余裕が出てきます。決して地方のサービスの質が劣るというわけではありませんが、今回の追い出し作戦は、この「量」にのみ注目した考え方です。
また、現在国が目指している地域包括ケアシステムは、要介護状態になっても地元に住み続けられる地域作りを目指すもの。せっかく整いつつある在宅サービスの存在を無視して、他地域の施設サービスへ移行をすすめるのは、たしかにこの流れに反するかもしれません。

これを都市圏高齢者の追い出しととらえるか、救済策と受け止めるかは人それぞれのようです。賛否両論はありますが、利用者の選択肢が増えたこと自体は喜ばしいことなのかもしれませんね。

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