施設内の集団感染どう防ぐ? 感染症の予防と対策

風邪やインフルエンザ、胃腸炎など、感染症が流行するシーズンとなりましたね。
この時期には学校や会社、家庭でも、うがいや手洗い、マスク着用など、予防に気を使うもの。
ましてや、高齢者の生活の場である介護施設では、特にしっかりした対策が必要になります。

高齢の利用者たちは体力も弱り、免疫力が落ちていたり持病があったりと、感染を起こしやすい状態。
さらに、いったん感染すると重症化し、ときには死に至るケースも見られるため、介護するにあたってはきちんとした感染予防の知識と対処法を心得ていなくてはなりません。

そこで今回は、介護施設での感染の予防と、集団感染を防ぐための対策について、改めて確認していきましょう。

スタッフ自身の健康管理が第一

介護職員が、施設内に感染症を持ち込まないことが予防の第一歩です。

  • ●出勤した際には、うがい・手洗いを行ってから仕事に入る
  • ●感染症が流行する時期には、マスクを着用する
  • ●体調が悪いときは必ず医療機関を受診する
  • ●インフルエンザワクチンを毎年接種する

施設内での感染を防ぐには

介護施設における感染症対策は、「日頃からの予防」「感染者の早期発見」「発生時の拡大防止」が基本になります。

1) 日頃からの予防(スタンダードプレコーション)

「誰もが何らかの感染症を持っている可能性」を考え、「感染の危険性のあるもの※」への接触を最小限にすることが重要です。
※利用者の「血液」「体液」「傷や湿疹のある皮膚」「粘液」

<手洗い>

①「感染の危険性のあるもの」に触れた場合は、必ず手洗いを。手袋をしていても、はずして洗うなど徹底する。
②手洗いには石けんを利用する。
③1ケア1手洗い、の基本を守る。

<手袋>

①「感染の危険性のあるもの」に触れるときは、使い捨て手袋を着用する。
②他の利用者や清潔なものに触れる前には、手袋をはずし手を洗う。
③はずした手袋は密封して処理する。

<マスク・ゴーグル・ガウンなど>

①咳などの飛散が考えられる場合はマスク・ゴーグルなどを着用する。
②体に「感染の危険性のあるもの」が触れる可能性があるときは、ガウン、ビニールエプロンを着用する。

2) 感染者の早期発見

感染が起きた場合、早期に発見して受診・隔離などの対応をとることで、感染の拡大を防げます。
早期発見のための日頃の観察ポイントをあげてみましょう。

  • 発熱 →明らかな発熱。または微熱でも発疹・おう吐・下痢・リンパ腺の腫れなどがみられる
  • 便の状態  →下痢・血便・続く軟便など
  • 皮膚の状態 →湿疹・発赤・発疹
  • 目の状態 →充血・目やに・まぶたの腫れ
  • 耳の状態 →耳だれ
  • 口の状態 →口内炎
  • 痰の状態 →色や量の変化
  • 床ずれ →大きさや色、においの変化
  • その他 →ひどい咳・食欲がない・おう吐など

3) 感染の拡大防止

それでは実際に症状のある入所者に対し、どのように対処したらよいのでしょうか。
症状から考えられるもっとも重大な感染症である可能性を想定して、初期対応をまとめてみました。

■下痢・おう吐の入所者がいたら

たとえ一人でも、接触や経口による感染、食中毒などを想定して、以下の対応をとります。

  • ①患者の隔離 →持ち物なども一緒に、個室にとどめます。
  • ②汚物の処理  →ガウン・手袋を着用し、感染の拡大を予防します。
  • ③医師の診察 →施設の契約医師に診察を依頼します。
  • ④消毒 →ベッド柵・テーブル・床・トイレ・共用廊下の手すりなどを次亜塩素酸ナトリウム溶液で清拭します。
  • ⑤外部への報告 →多くの発症者がいる場合は、保健福祉事務所への報告を検討します。

■激しい湿疹や痒みが続く入所者がいたら・・

疥癬など、伝染する皮膚病の可能性も考えます。

  • ①患者の隔離 →個室にとどめ、健常者との接触を避けます。
  • ②感染拡大の予防  →ケアにはガウンと手袋を着用します。ケア後は石けんと流水で手洗いを。患部に直接触れることは絶対に避けます。
  • ③医師の診察 →施設の契約医師に診察を依頼します。
  • ④日常の注意 →患者の衣類、リネン類は毎日洗うこと。落屑が飛び散らないように丁寧に扱い、50℃以上の熱湯に10分間つけてから洗います。入浴はほかの入居者が入ったあとにします。

施設内の衛生管理も重要

感染ルートを断つためには、施設内の清潔を保つことも大切なポイントです。

  • ●清掃はこまめにし、1日1回は水拭きして乾燥させます。雑巾やモップも清潔に。
  • ●床に血液・分泌物・排泄物などがついた場合は、必ず次亜塩素酸ナトリウム溶液で清拭後、水拭き・乾燥させること。
  • ●トイレやドアノブ、手すりなど、入居者が頻繁に触れる設備は、消毒用エタノールで清拭します。
  • ●浴槽のお湯の交換や、浴室の清掃・消毒はこまめに行います。

以上、介護施設内での感染症予防と、集団感染を防ぐための対処法をあげてきました。
ここには掲載しきれませんでしたが、正しい手洗いの方法や、汚物の処理など、介護職員が身に着けておくべき知識はまだまだあります。
自治体が発行している感染症予防マニュアルなども参考にし、日ごろから感染症予防に対する意識を高めておくことが大切です。

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