需要が急増!  訪問介護ヘルパーのお仕事とその待遇

近年、増え続ける高齢者人口に伴い、在宅介護の家庭が急増しています。
その大きな理由のひとつが、医療費を抑えるために在宅介護を推し進めようとする国の政策。
特別養護老人ホームは入所条件が要介護3以上と厳しくなり、病院では患者の七割以上を「在宅」に返さなければ診療報酬が加算されないため、高齢者をどんどん退院させています。
このような背景から、訪問介護ヘルパーの需要が急増し、介護事業所の人手不足は深刻。
派遣するヘルパーがいなくて仕事を受けられないケースも少なくないといいます。
最近では、痰の吸引など本来は看護師にしかできなかった医療行為も、研修を受ければ可能になるなど、その専門性も高まっている訪問介護ヘルパー。
今回は、訪問介護ヘルパーを取り巻く介護現場の状況、そしてヘルパーの仕事内容や待遇について、掘り下げていきます。

変わる制度と現場の対応

昨年4月に、介護サービスの公定価格である「介護報酬」が大幅に引き下げられたのに続き、全国で段階的に「介護予防・日常生活支援総合事業」(総合事業)がスタートしています。
これは、要支援1・2の高齢者に対する訪問介護、通所介護が、介護保険サービスからはずされることに伴い、その受け皿として設置された新制度。
その結果、要支援1・2の人のほとんどが、これまでより緩和した基準による訪問型サービスを受けることになりました。
利用者宅へ訪問し、掃除や調理を行う「生活援助」の時間が1時間以上から45分以上と短くなり、事業所へ支払われる介護報酬も減少。それでもサービスの質を変えるわけにはいかないと、これまで通りのケアを続ける事業所も多く、訪問介護ヘルパーに求められる技術と能力はますます高度なものになっています。

外国人の訪問介護解禁へ

増える一方のニーズに対し、厚生労働省は今年2月、これまでは特別養護老人ホームなどの施設でしか働けなかった東南アジアからの介護福祉士に、訪問介護事業所で働くことを認める方針を固めました。
日本は経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国から介護職員を受け入れており、これまでにのべ2000人以上が来日しています。
日本語での会話に不安があるため、日本人スタッフと共に働ける施設でのみ受け入れていた外国人介護職員ですが、今後は一人で高齢者宅を訪問し、介護サービスを行うことが認められるようになります。
また、施設での受け入れ基準として、原則として同じ国から同時に二人以上を受け入れるという規制がありましたが、今年4月をめどに、その基準も緩める方針です。

訪問介護ヘルパーの仕事内容と気になる待遇は?

国内だけではまかないきれないほど需要が急増し、今や引く手あまたの訪問介護ヘルパー。
求人数も増加の一途をたどり、好待遇の募集も目につくようになりました。
そこであらためて、訪問介護ヘルパーという仕事の内容と、待遇、必要な資格について、おさらいしてみたいと思います。

●訪問介護ヘルパーの仕事内容●

訪問介護ヘルパーの仕事は、大きく分けて次の3つです。

(1)生活援助

高齢者の暮らしをサポートするための、家事全般を行います。
調理に関しては、高齢者の好みや健康状態を考えて献立を立てたり、ときには冷蔵庫の食材で調理することもあるので、ヘルパーの調理スキルも求められます。

・調理     ・掃除    ・洗濯    ・食料品や日用品の買い出し
・衣服の整理  ・ゴミ出し  ・シーツ交換 ・薬の受け取り  など

(2)身体介護

高齢者の身の回りの介護です。実際に相手の身体に触れて行うので介護技術が問われます。また、体の大きい男性の介護にあたることもあり、体力も必要になってきます。

・食事介助   ・入浴介助   ・排せつ介助(おむつ交換も含む)
・身体の清拭  ・着替えの介助 ・洗顔・歯磨きの介助
・移動の介助  ・外出介助   ・服薬介助  ・体位交換  など

(3)通院等乗降介助

病院や施設などへの外出の際に、福祉車両や介護タクシーへの乗り降りを介助します。
家を出て車に乗るまでが通院等乗降介助で、病院や施設での介助は含まれません。

・福祉車両・介護タクシーへの乗り降りの介助
・高齢者が運転する車への乗り降りの介助
・バス停までの付き添い

●訪問介護ヘルパーの平均給与●

正社員、派遣社員、非常勤(パート)と、さまざまな雇用形態での求人がある訪問介護ヘルパー。
非常勤の場合、平均時給は1000円程度ですが、最近では1500円を超える好待遇の求人も出てきています。
ただし一件あたりの時間が短く、また移動時間は時給に含まれないため、なるべく同じエリア内で一日に数件のシフトを組むなど、仕事の入れ方に工夫が必要。
正社員・派遣社員の月収は18万~22万ほど。年収にして平均290万円程度となっています。

●訪問介護ヘルパーの勤務時間●

訪問介護ヘルパーの勤務形態で最も多いのは、非常勤で、利用者宅への直行直帰となります。
ヘルパーの希望する日時を考慮して勤務スケジュールが組まれ、それに沿って働くので、人によっては週末だけ、また平日の夕方のみなど、ヘルパー自身の都合によって勤務時間はさまざま。シフトの入れ方次第で、休日や収入を自由に調節できるのが、非常勤の訪問介護ヘルパーの魅力といえます。
これに対し、正社員で働く場合には、利用者の緊急時や、非常勤ヘルパーの都合が悪くなったときなどに対応することが求められ、休日出勤も少なくないようです。

●訪問介護ヘルパーになるには●

必須となるのは介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)の資格です。
また、実務者研修や介護福祉士といった介護関連の資格、医療行為であるたんの吸引や、胃ろうによる経管栄養に対応できる喀痰吸引等研修も、かなりのアピールになります。
実務経験は問われませんが、まずは時給制のアルバイト・パート・派遣からスタートし、試用期間もかねて数ヶ月働いたのち、正社員として雇用されるという流れが多いようです。
さらなるステップアップをはかるなら、管理業務であるサービス提供責任者を目指すと良いでしょう。

まとめ

深刻な人材不足に、外国人訪問介護士の解禁。
訪問介護ヘルパーのニーズは高まる一方です。
その高度な介護スキルだけでなく、高齢者の日々の暮らしに笑顔を届ける訪問介護ヘルパーは、今や、急増する在宅介護の現場にとって欠かせない存在。
人の役に立てる喜びと、小さなことでも感謝してもらえるやりがいは、介護の醍醐味といえるかもしれません。
これから介護の仕事を目指す方はぜひ、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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