注目の介護療養型老人保健施設(新型老健)とは?

ここ数年、耳にすることの多い「介護療養型老人保健施設」。
新型老健とも呼ばれ、注目されています。
高齢者福祉施設にはいろいろな種類があり、それぞれに役割が違うため混乱しがちですが、この新型老健も、従来の「介護老人保健施設(老健)」と「介護療養型医療施設(療養病床)」の中間的な立場に位置する、新しい役割を担った施設です。
今回は、この介護療養型老人保健施設について、詳しくみていきましょう。

新型老健とは?

2008年、厚生労働省によって創設された新しい施設が、この介護療養型老人保健施設(新型老健)です。
従来の介護療養型医療施設では、老人の医療費が無料になった1973年ごろから、それほど医療的なケアを必要としていないのに、家庭の事情などで入院する人が増えているのが問題視されてきました(社会的入院)。
この問題が医療費を圧迫していると考えた厚生労働省が、介護療養型医療施設の廃止と、医療保険型療養病床の大幅削減に向けて動き出したのです。
しかし、そのために行き場を失う「医療・介護難民」は11万人以上といわれ、対策が急務となりました。そのため、受け皿のひとつとして発足されたのが、新型老健です。
介護老人保健施設よりは「看護職員の24時間配置」など医療・看護体制が強化されていますが、介護療養型医療施設に比べると医師の数を削減するなど、ちょうど両者の中間的な立ち位置にあるのが、この新型老健なのです。

老健と新型老健の違い

それでは、新型老健と従来の老健とはどのような違いがあるのでしょうか。
実は、医療スタッフの配置や設備の基準などに、ほとんど差はありません。ただし決定的なのは、受け入れる人と提供されるケアの違いです。
老健では、特別な医療ケアを必要としない人を受け入れ、介護サービスやリハビリテーションなど、在宅介護に復帰することを目的にしたケアが行われます。そのため入居期間も、3ヶ月から半年と短いものになります。また、血糖値の管理や床ずれの治療などには対応できず、入所を断られる場合もままあります。
それに比べ、新型老健では、医療機関からの患者受け入れや、医療ケアを必要とする人を規定数受け入れることが義務付けられていて、より充実した医療サービスを提供しています。たんの吸引や胃ろう、経管栄養や気管切開などのある人も療養することが可能で、ターミナルケア(終末医療)や看取りにも対応しているのが大きな特徴となっています。

新型老健の問題点と今後

廃止される予定の介護療養型医療施設では、利用者100人に対し医師が3人となっていますが、新型老健では1人に減らされています。そのため、介護報酬が介護療養型医療施設に比べて2割ほど安くなります。
結果、経営する施設にとっては大きな減収となり、存続が難しくなるケースも出てきかねません。また経費を抑えるために看護スタッフを減らしたり、サービスの質を落とすなど、入居者に悪影響を及ぼすことも考えられます。
さらに、医師の配置が削減されることから、夜間の患者の容体急変に対応しきれないという懸念も指摘されています。
制度が発足して半年の時点では、新型老健へ転換を考える介護療養型医療施設は全体の3割未満だったという調査結果をみても、この制度に対する疑問や反発の声が多いのがわかります。
受け皿としての新型老健への転換が計画通り進まないため、2012年3月末を期限とした介護療養型医療施設の他施設への転換が間に合わず、厚生労働省は、この期限を2018年3月末まで猶予することを決めました。
この先、新型老健が普及していくには、これらの問題点をクリアする何らかの対策が求められることになるでしょう。
要介護者を抱える家族にとっても、介護職員にとっても、今後の推移を注意深く見ていく必要がありそうです。

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