利用者様の体調急変、思わぬケガ・・もしものときの緊急対応

介護の現場は、利用者様の健康な暮らしをあずかる場。
介護職員は日々、おひとりおひとりの観察を欠かさず、少しの変化も見落とさないよう心を配っているものです。
けれどそんな中、日中はもちろん、人手の少ない夜間に緊急事態が起きることへの不安は、スタッフ全員が常に抱えているはず。

「もし医療スタッフのいない夜間に、利用者様が急変したら・・?」
「適切に対応して、大事に至らずすませることができるだろうか」

そこで今回は、そんな不安を軽くし、何が起こっても落ち着いて対処するための、基本的な緊急時対応マニュアルをお届けしましょう。
備えあれば憂いなし。ぜひ一通り目を通して、頭の中でシミュレートしてみてくださいね。

介護スタッフが感じている不安とは

ある特別養護老人ホームで行われたアンケートでの結果を見てみると、介護スタッフは次のような点に、特に不安を感じていることがわかりました。

●意識混濁・意識不明時の対応 
●ケガへの対応 
●誤嚥時の対応 
●緊急時の家族への連絡方法 
●看護師への連絡方法 
●その他・処置に必要な機材がどこにあるかわからない等

このような問題に対しては、看護師による講習を実施したり、独自の連絡カードを設置するなどの対策をとっている施設もあり、スタッフの一員としてしっかり身につけることが求められます。
そしてそれとは別に、ひとりひとりが基本的な知識を確認しておくことも大切なことといえます。

知っていれば安心 ! 緊急時の対応

それではさっそく、介護職が知っておきたい、基本的な緊急時の対応をご紹介しましょう。
※細かい部分については異なる場合もありますので、各施設の取り決めに従ってください。

①倒れている利用者を見つけたとき

まずは耳元で普通に声をかけ、反応がなければ大きな声で呼び、肩をたたく、手を握るなどしてみます。意識がない場合は、脈と呼吸を確認します。

・脈がある・呼吸がある・・ かかりつけ医に連絡
・脈がない・呼吸がない・・ 119番通報。待つ間に②応急手当をする 

②脈がない・呼吸がないときの応急手当

・気道を確保
・・ 衣服を緩め、口の中にものがあれば出す。額を下げ、顎を上げて気
道を確保。肩の下にタオルを敷くとよい。
・人工呼吸
・・ 気道確保しても呼吸がないときは人工呼吸をする。片手で額をおさえ、鼻をつまみ、相手の口に口をかぶせて、2回ゆっくりと吹き込む。
鼻から手を離し、口元に耳を近づけて呼吸音を確認する。
3~5秒に1回、これを繰り返す。
・心臓マッサージ
・・ 人工呼吸でも呼吸・脈が戻らないときに行う。
みぞおちの少し上をてのひらの下部で3~4センチ圧迫する。1秒に1~2回のリズムで規則的に。

③誤嚥したときの応急処置

誤嚥とは気道に食べ物や異物が入って詰まること。呼吸ができず、窒息の危険が。
誤嚥のサインには、のどをギュッとつかむ(チョークサイン)、声が出ない、顔が赤い、または青いなどがあります。  

・背部叩打法
・・ 座位か横向けに寝かせ、上半身を前に倒して、下あごを突き出させる。肩甲骨の間をてのひらのつけ根で、強く素早く叩く。
・ハイムリック法
・・ 後ろからわきの下を通した両手をへそとみぞおちの間にあてる。
片手のこぶしをもう片方で握り、すばやく斜め上に引き上げる。

④出血したときの応急手当

・直接圧迫止血
・・ ガーゼやタオルなどを何枚か重ね、出血部位をじゅうぶんに覆う。
上から強く圧迫。出血が止まるまで続ける。
※感染予防のため、ゴム手袋やビニール袋で手を覆って行う。

⑤やけどの応急手当

すぐに流水で冷やすこと。流水を直接あてると刺激が強いため、洗面器などに水を流して
患部を漬けるか、タオルなどで傷を保護して流水を当てるようにする。
衣類は無理に脱がせず、冷やした状態で早急に医師に引き継ぐこと。

⑥骨折の応急処置

・解放骨折のとき
・・ まずは止血を。外に出た骨は無理に戻さず、そのまま医師に引き継ぐ。
・皮下骨折のとき
・・ 骨折した部分が動かないよう、副木で固定。副木は傘や定規、雑誌など、身の回りのもので代用できる。

⑦119番通報

救急車を呼ぶ場合、119番に電話をすると、問答の順番は以下のようになります。
「火事ですか、救急ですか」→「救急です」
「住所を教えてください」→ 施設の住所と、介護施設であることを伝える
「どうしましたか」→ 「利用者の名前は○○様です。年齢は○○歳、病名は○○です。
症状は(できるだけ具体的に)です」
「あなたのお名前と電話番号を教えてください」→ 自身の名前と電話番号を伝える


※伝え方のポイント※
「緊急」であることが伝わることが大切。
呼吸停止、心肺停止、意識不明など明らかな緊急はもちろん、突然のマヒや言語障害、強い
胸の痛みなど緊急性の高い症状、大量出血や骨折なども救急車の対象です。
これらの急を要する症状をはっきりと伝えることを念頭に、落ち着いて対応しましょう。

以上、よく起こりがちな緊急事態に対する、基本的な対応をみてきました。
このような状況は、高齢者にとっては決して珍しいことではありません。
介護職員は、つねに突発的なアクシデントが起こりうることを念頭に、実際の行動の手順や、
連絡体制の確認など、不測の事態に備えることが大切といえるでしょう。

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