人手不足に期待の介護ロボット、普及へのハードルとは?

平成24年、国は「ロボット技術の介護利用における重点分野」を公表しました。
今後の要介護者の増加を見込んだ、介護ロボットの研究開発および実用化に向けて、ついに本腰を入れたと見ていいでしょう。
介護ロボットは、介護施設や家庭で介護を行う人々に、ずいぶん以前から注目されていました。
しかし、世界でもトップクラスの先進技術を誇る日本とはいえ、その実用化にはさまざまな課題があり、思うようには進んでいません。
今回は、そんな介護ロボットの現状と課題、今後の展開について考えてみたいと思います。

介護ロボットってどんなもの?

「ロボット」というと、人の形をして、人間と同じような仕事をかわりにするというイメージがありますが、介護ロボットは少し違います。
実際に開発されている介護ロボットを例に、その働きを見てみましょう。

●移乗補助ロボット

ベッドと車椅子間などでの移動の際、介助者に装着するロボットです。
腕から腰までカバーし、腕力のない女性や高齢者でも、楽に介助ができます。
また、移乗のときに腰にかかる負担も減らしてくれます。非装着型も開発中。

●見守り支援ロボット

一人暮らしや、日中に家族が留守になる高齢者を見守るロボット。
センサーで見守り、安否確認を行います。ぬいぐるみ型など、一般家庭に置きやすく、価格も手頃なものが開発されています。
また、飲み忘れ防止などの機能をもつ薬箱や、見守りセンサーを設置するタイプのエージェント型ネットワークロボットの開発もすすめられています。

●移動支援ロボット

高齢者の歩行や、荷物運びを助けてくれるロボットです。
今でも多くの人が利用しているシルバーカーのハイテクタイプといえます。
路面を感知してのアシストやブレーキ、GPS機能、見守り機能なども搭載。
椅子からの立ち上がりや、トイレ往復と姿勢保持をサポートする屋内型もあります。

●入浴支援ロボット

要介護者がひとりで使用できる、入浴介助を支援するロボットです。
浴槽への出入り、湯船につかる動きをサポートしてくれます。
工事不要で、家庭で気軽に使えるタイプが開発中。

以上のように、すでに開発中のものから研究段階のものまで、さまざまな介護ロボットのプロジェクトが、実用化を目指して進められています。

介護ロボット普及へのハードル

では、介護ロボットは介護の現場からはどのように評価されているのでしょうか。
人手不足の介護業界ですが、実は介護ロボットに関しては、大歓迎とはいえないのが現実のようです。

その最も大きな理由はコスト。
まだまだ需要が少なく、量産化が難しいため、たとえ実用化したとしても、一台あたり百万円単位となれば、気軽に試すわけにはいきません。
人件費が削減できるというメリットもありますが、そこまで現場で実用的に使いこなすには、幾度もの改善が必要になると思われるため、なかなか積極的になれないのが、介護現場の本音のようです。

次にあげられるのが、イメージです。
介護は「サービス産業」といわれ、ホスピタリティが重要視される世界です。要介護者へのあたたかい思いやり、ふれあいが大切なこの仕事に、機械を使うことへの抵抗感は拭えません。ロボットによる機械的な介護、という冷たいイメージに、ためらいを感じる介護者は少なくないようです。

そして最後に、まだまだ現場のニーズにマッチしていない点です。
介護の仕事は、工場の生産ラインのように自動化できるものではなく、負担の大きい部分のみをロボットに頼る形になります。しかしそうなると、たとえば移乗のときにロボットを装着し、またすぐに外して別の仕事をするなど、仕事の流れの中では使い勝手の悪いものとなってしまうのです。

現場を熟知して役立つ技術を

こうした介護現場側からの冷めた反応を熱い視線に変えるには、まず何よりも、開発者が介護の現場を体験し、その本音を理解することでしょう。
「簡単に使えてコストも低い」
「ホスピタリティを損なわず、裏方で力を発揮してくれる」
「準備や着脱に手間がかからない」
など、これからの介護ロボットには、現場の目線と、真のニーズにこたえた技術開発が求められています。

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